中国中央病院呼吸器外科

呼吸器内科、放射線科、リハビリテーション科との連携を保ちながら。術前から術後までより包括的な診療を行うように心がけています。

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呼吸器外科の紹介

対象疾患

悪性腫瘍:肺がん、肺転移、悪性胸膜中皮腫、胸腺がん・胸腺腫など
良性疾患:胸部の良性腫瘍、気胸、膿胸、胸部外傷、多汗症など
上記に限らず外科治療が必要な様々な胸部疾患を手掛けています。手術例の多くは傷が小さく体への負担が少ない胸腔鏡(カメラ)での治療を行っています。

当院での肺がん診療体制

※各診療科・診療部の協力のもと総合的な診療行っています

手術件数と肺がんの治療成績

平成23年度の診療体制の変更後(鷲尾赴任)、約1000件の呼吸器外科手術を施行しております。
手術全体の50~60%程度が肺原発悪性腫瘍手術であり、その95%以上を高度な技術が必要とされるComplete VATS(完全胸腔鏡下手術)で行っています。

平成30年度より常勤医師3名(鷲尾、平野、荒木)の診療体制となり、診療体制もより充実してきております。

医師紹介専門・資格

鷲尾 一浩(わしお かずひろ)
鷲尾 一浩(わしお かずひろ)医務局長
学歴 平成4年高知医科大学(現:高知大学)卒業
職歴 岡山大学腫瘍胸部外科・国立岡山医療センター
国立宇部医療センター・岡山労災病院等
H.Lee Moffit Cancer Center留学
資格 外科指導医・専門医・呼吸器外科専門医
がん治療認定医・CT肺癌検診認定医
岡山大学医学部医学科臨床教授
受賞歴 2007年日本内視鏡外科会
カール・ストルツ賞(会長賞)受賞
専門領域 呼吸器外科、一般胸部外科
扱う疾患 肺癌・気胸・縦隔腫瘍・多汗症等
平野 豊(ひらの ゆたか)
平野 豊(ひらの ゆたか)呼吸器外科医長
学歴 平成18年岡山大学卒業
職歴 姫路聖マリア病院・四国がんセンター
岡山大学病院呼吸器外科(肺移植グループ)
資格 外科専門医・呼吸器外科専門医・がん治療認定医
専門領域 呼吸器外科、一般胸部外科
扱う疾患 肺癌・気胸・縦隔腫瘍等
荒木 恒太(あらき こうた)
荒木 恒太(あらき こうた)呼吸器外科医長
学歴 平成24年岡山大学卒業
職歴 兵庫県立淡路医療センター
広島市立広島市民病院
岡山大学病院
資格 外科専門医
専門領域 呼吸器外科、一般胸部外科

肺がん手術の低侵襲化

Complete VATSは開胸手術やHybrid VATSとは異なり直視下の手術でないため、精密な手技が不可能で危険性が高いと言われることもありますが、拡大視効果、手技のbrush upおよび手術器具の進歩に伴い精度の高い・安全な手術が行われるようになっています。

Q1:Complete VATSとは?

肺癌は胸腔内臓器であり、胸腔内へのアプローチ法には主に以下があり侵襲の大きさもそれぞれ異なります。

  • 標準開胸:
    皮膚切開・呼吸筋の切離範囲も大きく、肋骨も1~2本切離する。
  • Hybrid VATS:
    標準開胸より皮膚切開は小さく、肋骨も切離しない事が多いが、呼吸筋の切離はかなり広い範囲で行われる。
  • Complete VATS:
    Hybrid VATSよりさらに皮膚切開が小さく、呼吸筋の切離範囲も極めて少ない。
Q2:どのような施設で行われているか?

技術的には標準開胸→ Hybrid VATS→ Complete VATSと困難になる傾向あり。施行される施設も増加していますが技術的レベルが差異が大きいのが現状です。当院では肺癌手術症例の90%以上をComplete VATSで施行しております。

肺は形態上、右肺と左肺に分かれ右肺は上葉・中葉・下葉の3つに、左肺は上葉・下葉の2つに分かれます。さらに機能的な面からは各肺葉はさらに細かく区域(さらに細かく分ければ亜区域)に分けられます。

肺がんに対する手術療法は1930年代には片肺全摘術(肺がんのある側の肺、右肺のがんの場合右肺切除)が行われるようになりました。
1950年代からは肺葉切除術(肺がんのある肺葉、右上葉肺がんならば右上葉切除)が行われるようになりました。

現在では、以前に比べより早期がんが発見される機会が増加したために区域・亜区域・部分切除などの縮小手術が行われることも増えています。

肺がん手術の中で最も低侵襲で高度な技術が必要とされるのが完全胸腔鏡下肺区域切除です。そのような縮小手術を行うには外科医の技術だけでなく、術前に十分な解剖学的情報が必要となります。そのためには放射線科医師・技師・CT装置・画像解析ソフトが十分なレベルであることが必要となります。

当院では最新のモダリティーを整備しつつ、大病院にない風通しの良さを生かしてディスカッションを重ねレベルの高い術前検査が日常業務の一部として行われる様になっています。

縮小手術当院ではステージIの肺がんの中で耐術能と肺がんの進行度から適応と考えられる患者さんにI.C.(インフォームド・コンセント)を行ったうえで行っています。当院では2013年頃よりComplete VATS 肺区域切除を導入しており、現在では肺がんに対する根治的手術の約30%程度を占める様になってきております。その手術成績も肺葉切除と比較して遜色の無いものとなっています。

区域切除時の新たな取り組み

①術中ICG静注法

精度の高い区域切除を行うためには区域間を認識するための工夫が重要であり、当院ではそのためにICG静注法を採用しております。
術中に切除する肺区域の血管・気管支を切離した後にICGという色素を静脈注射すると、切除する区域は血流が遮断されているためICGが流れず、残る肺だけにICGが広がります。専用の胸腔鏡を使用することによりICGが発する蛍光を確認でき正確な区域間のラインが確認可能となります。
前述した3-D CTと併せて行うことにより、より精度の高い手術をおこなうことが可能となっております。

②Virtual assisted lung mapping(VAL-MAP)

縮小手術(区域切除および部分切除)が適応となる肺病変は、術中認識できないことがしばしばあります。
そのため術前に何らかの形で腫瘍の位置をマーキングしておくことが手術の確実性を高めることになると考えられており、当院では術前に気管支内に数か所色素を注入し腫瘍の位置を同定するVAL-MAP法を採用しております(VAL-MAP法を行う際には麻酔をかけた状態で行いますので苦痛も少なく合併症も殆どありません)。
さらに、VAL-MAPを行う際に注入する色素をインジコカルミンから蛍光色素であるICGに変更(ICG-VAL-MAP)することにより、より確実に腫瘍の局在の確認が可能となっております。
さらに、肺区域切除を行う場合には、術中ICG静注法により区域間を同定しておりますが(現在最もすぐれた区域間同定法と考えられています)、ICG-VAL-MAPと併用することにより、根治性と低侵襲性を求めたより複雑な区域切除も可能となっております。

③単孔式胸腔鏡下手術(Uniportal VATS)

当科では2019年2月から自然気胸に、2019年12月から原発性肺癌 (臨床病期I期)の区域切除に対して単孔式胸腔鏡下手術(Uniportal VATS)を導入しています。 
*単孔式胸腔鏡下手術 (Uniportal VATS) とは、1つの切開創(単孔)で手術を行う最新かつ低侵襲な胸腔鏡下手術です。医療機器の進歩および低侵襲な胸腔鏡下手術を目指し考案されました。
従来の複数の孔で行う胸腔鏡手術よりも整容性に優れ、また、切開創も小さく損傷する肋間数が少ないことから疼痛が少ない可能性が示唆されています。
特に単孔式胸腔鏡下区域切除は最も高度な技術が必要と考えられますが、当科では従来から行ってきている完全胸腔鏡下手術の豊富な経験を生かして安全に導入できております。

 

気胸手術に対する取り組み

気胸手術は肺癌手術より比較的難易度が低いため、全国的にComplete VATS(完全鏡視下手術)が普及しております。多くの施設では下図のように3つのポートを胸に留置して手術を行っています。1つのポートを留置するために1~2cmの傷をつける必要がありますが、気胸患者様は特に若い方が多いため、多くの傷をつけることは美容面で無視できない問題です。
そのため当院では1つのポートで手術を行う単孔式胸腔鏡手術(Uniportal VATS)を行っております。

この方法ですと、下図のように胸腔ドレナージの際にできた傷を少し広げるだけで手術が可能です。1つのポートから胸腔鏡と複数の鉗子を挿入し、手術を行います。3孔式の手術と比較し手術の難易度はあがりますが、当院では胸腔鏡手術の豊富な経験があり、この方法が採用できています。単孔式で行うことで、手術の後には2㎝程度の傷が1か所残るだけであまり目立たず、患者様にとってより満足度の高い手術と考えております。

多汗症(緊張時の異常発汗)に対する取り組み

多汗症とは?

発汗はその動機により、温熱性発汗、味覚性発汗、精神性発汗、等に分類されます。これらは、正常な人に起きる発汗の分類です。温熱性発汗は体温が上昇したときに起こり、気化熱により体温を降下させる働きがあり、手のひら、足の裏を除くほとんど全身に起こります。味覚性発汗は、熱い、または味覚の強い刺激性の食物を摂取した時に顔面に限局して起きます。精神性発汗は、精神的緊張やストレスなどによって、顔面、手のひら、腋、足の裏などに起きる発汗です。精神性発汗自体は異常ではありませんが、過剰な発汗がある場合は多汗症の疑いがあります。

発刊のタイプ(動機による分類)

症状は?

精神的緊張やストレスなどによって過剰な発汗がおきます。主な過剰発汗部位は、顔面、手のひら、腋、足の裏です。日常生活を送る上では、特に手のひらの過剰な発汗が問題になると思います。実際、手のひらの過剰発汗を何とかしてほしいと言われる患者さんが多いです。発汗の程度はさまざまで、手のひらに汗がにじむ程度の人から、指先から汗が滴り落ちるほど発汗する人までいます。その程度により、Ⅰ度:手のひらが汗で湿る程度、Ⅱ度:手のひらに汗の水玉ができるが,垂れるほどではないもの、Ⅲ度:手のひらから汗が垂れることがある、に分類されます。

手掌多汗症の程度分類

原因は?

まず、発汗のメカニズムに関して簡単に説明します。まず汗はどこから分泌されるかということですが、汗腺から分泌されます。汗腺はエクリン腺とアポクリン腺に分けられます。エクリン腺は、ほぼ全身に分布しており、特に手のひら、足の裏に多く分布し、交感神経によって支配されています。アポクリン腺は脇、陰部付近に分布しています。多汗症で問題になるのはエクリン腺からの発汗です。汗は脳からの指令が脊髄、交感神経を通して汗腺に伝達されて出る仕組みになっています。多汗症では交感神経が過敏になって汗の分泌が亢進している状態と言えます。言い換えれば、多汗症の人は一般の人より交感神経の反応が強いと言えます。もっとも、なぜ交感神経が過敏なのかは不明です。ここで言っておきたいのは、多汗症の患者さんでは、精神的なストレスがかかると過剰に発汗しますが、精神的な病気ではないということです。

また、よく混同される腋臭(えきしゅう、わきが)は、性ホルモンの影響を受けるアポクリン汗腺の中にある脂肪酸が皮膚の表面の細菌によって分解され、3メチル2へキセノイン酸となり、それが臭いの原因になるといわれており、まったく別の疾患であり、治療も異なります。

  • 原因は?
  • 発汗のメカニズム
発症年齢は?

多汗症の人は、乳幼児期にはすでに手のひら・足の裏が汗ばんでいたりして、多汗症状が現れており、ものごころがついた時にはすでに自分は多汗症だったという人がほとんどのようです。小さい頃手をつないで歩くのがたいへんだったということを、後になって母親から聞かされたという人もいます。中学生、高校生頃に気になり出す人が多いようで、思春期の患者さんが目立ちます。以後年齢とともに症状が軽くなる傾向はありますが、多くの場合中年以降も症状は持続します。

発症頻度は?

稀な病気ではなく患者さんは人口の約0.5%に発症すると言われています。

遺伝するのですか?

東洋人に多く、高温多湿の地域、特に沖縄県で多いとされています。沖縄県に偏在傾向がみられることや、兄弟、親子でみられることもあり、遺伝との相関が考えられますが、はっきりしていません。

治療方法は?

交感神経の働きを抑えれば汗を止めることができます。治療法には以下のものがあります。

  • 内服療法
    抗コリン剤、自律神経調節剤、交感神経遮断剤、抗精神病剤など。
    *効果が明らかでなく副作用も多
  • 軟膏などの外用療法
    塩化アルミニウムの汗止め液など。
    *副作用少なく効果期待できる
  • イオントフォレーシス治療(イオン浸透療法)
    手のひらを溶液に浸し我慢できる範囲内でてのひらに電流を流す方法。
    *効果あり、月2回以上の施行必要、中断で効果なくなる
  • ボツリヌス毒素の局所注射
    ボツリヌス菌を注射することで交感神経から汗腺への司令をブロックする方法。海外ではよく行われていますが、日本での保険適応はなく、一部の美容形成外科で自由診療として行われているだけです。
    *腋窩多汗症に効果あり、手掌多汗症には保険適応なし、
    手掌多汗症の治療ガイドラインからは削除
  • 神経ブロック
  • 手術

まず非侵襲的治療が行われます。一般的に、最初に試われている治療法は外用療法です。外来を受診する多汗症の患者の半数以上がコントロール可能とする報告もあります。外用療法が無効な場合、イオントフォレーシス治療が行われることが多いようです。現在、イオントフォレーシス治療用の器具の家庭での使用も医師の指導の下に可能となっています。これらの治療は皮膚科で行われることが多いです。それらの治療が無効であった場合、侵襲的治療である、胸部交感神経ブロック(麻酔科で行われることが多い)、手術(外科で行われることが多い)が行われますが、器具・手技の発達により手術が低侵襲に行えるようになったことや効果の確実性が高いことなどもあり、手術が行われることが増えています。

手術適応は?

絶対的な適応はありません。つまり、手のひら、脇の発汗が、日常生活に支障をきたすほど量が多く、医師から多汗症の診断を受けた人で、強く手術を希望されるかたに限ります。程度分類がIII度であっても本人の希望が無ければ手術は必要ありませんし、逆にI度であっても本人の精神的苦痛が大きく、強く手術を希望される方は手術の適応となります。後ほど述べますように、副作用の問題もありますので、十分な説明を受け、よく考えてから手術を受けるのが良いと思われます。医師から積極的に手術を勧めることはありません。

どの様に手術は行われますか?

多汗症に対する手術は、手のひら、脇、顔面の発汗を抑えるために行います。一般的に行われている方法について説明します。手術は全身麻酔下に行います。最近は、胸腔鏡を挿入し、手のひらの汗を制御している胸部交感神経を選択的に遮断(焼灼、切離、切除、クリッピングなどの方法があります)します。今までは、両側の胸部交感神経遮断術を一度に受けるかたが多かったですが、最近では、まず片側の胸部交感神経遮断術を受け、経過を見て残りの片側の胸部交感神経遮断術を受けるかたも増加しています。手術時間ですが、片側20-30分前後で、傷は3~5ミリ程度のものが片側1~3か所となります。傷が小さいので、手術痕はほとんど目立ちませんし、痛みを訴える患者さんはごくわずかです。

*当院では交感神経幹の切離レベル及び焼灼の範囲は患者さんの要望と副作用とのバランスを十分検討した上で決定します

一般的に行われている手術について

手術の効果は?

専門の施設の場合ですが、効果は手術後すぐに現れ、両手が温かくなり、手のひらの汗は、ほぼ100%の患者さんで止まります。わきの下の汗を完全に止めることは難しいですが、60~80%の患者さんで効果が期待できます。効果は半永久的です。再発率は非常に低い(1-2%)とされています。

手術の副作用は?

この手術で一番問題となるのは代償性発汗で、手のひら、腋の汗が止まる代わりに、背部、腰部、腹部、大腿部に汗が増える傾向があります(これは、最初に示した発汗の分類の中の温熱性発汗が増強するものです。精神性発汗が他の部位にでるわけではありません)が、個人差がかなりあります。また、手術により手のひらの発汗が止まるため、冬季に乾燥により、手のひらの乾燥に対して外用剤を必要とする場合があります。参考にですが、当院で以前行った術後の満足度のアンケート調査の結果を示します。全国の他の施設からも同様な結果が報告されています。

手術の副作用は?

手術の費用は・入院期間は?

現在、保険診療として認められています。この手術は欧米の先進国では半世紀も前から行われてきました。しかし日本で、 多汗症に対する保険医療として認められたのは1996年からです。日本はこの治療が認められた最後の先進国です。それ以前は、日本では、 多汗症の人がいることとか、多汗症が治療可能な疾患とは旧厚生省や医師の間でさえ認知されていませんでした。手のひらの発汗を抑制するための治療として日本で認められたのは比較的最近です。
入院期間は、日帰り手術を行っている施設もありますが、おおむね1-3日程度の入院が必要と考えられます。

最後に

発汗が心理的な影響を受けやすい生理現象であるために、ストレスが多汗症自体を悪化させると考えがちですが、そういうわけではありません。 もちろん、ストレスがかかれば汗は出やすくなります。しかし、ストレスが発汗に影響することと、多汗症本体を悪化させることとは、別に考えたほうがよいと思います。多汗症は病気が進行したり、健康を阻害するというものではありません。治療法に関しても色々な利点・欠点があります。お悩みの方は専門医にまず相談されることを進めます。

受診をご希望される場合は、事前に電話でのご予約をお願いいたします。
084-970-2131(平日 9:00〜17:00)