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気管支喘息とは

中国中央病院からの健康アドバイス 第68回

はじめに

喘息は、主にアレルギー性の炎症によって気管支が狭くなる病気で、炎症を鎮めないでおくと、発作の起こりやすい状態が慢性化し、突然の咳き込みや呼吸をするたびにゼイゼイ、ヒューヒューといった音がする喘鳴(ぜんめい)、息苦しくなる、といった症状が起こります。

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疫学

成人の気管支喘息は、過去30年間で約3倍にも増加したといわれています。喘息患者総数は小児で150万人、成人が400万人といわれています。小児では乳児期(生後~1歳)に多く、成人では中高年(45~75歳)に多く発症します。思春期(小学生高学年)前は男性が多く、思春期以後は女性に多い傾向です。また、家族にはアレルギー疾患を持つ家族が多く、喘息を発症するリスクが高くなります。我が国の喘息による死亡は、年々減少はしていますが未だ年間2000人超年間に亡くなる方がおられます。

原因

ダニやハウスダストなどのアレルゲン(アレルギーの原因物質)が喘息になりやすい体質の人の体内に入ると、IgEという抗体がつくられます。このIgEがアレルゲンと結合して肥満細胞という細胞を刺激すると、瞬時に細胞内のタンパク質が放出され、それにより気道に炎症が起きて気道が細くなり、喘息症状が引き起こされます。喘息患者さんの気道には肥満細胞や好酸球などの炎症をおこす細胞が健康な人に比べて多く存在しています。

検査方法

  • 皮膚反応テスト:アレルギー反応を調べる
  • 血液検査:血液中のアレルギー関連物質を調べる
  • 吸入誘発テスト:(血液検査で陽性反応が出た場合)アレルゲンエキスを吸入して発症するか調べる
  • 胸部X線検査、呼吸機能検査、喀痰検査、気道過敏性検査
  • 現在保険適応外ではあるが呼気内の一酸化窒素、呼気凝縮液の解析などを調べ診断します。

治療

  • 抗炎症薬(吸入ステロイド、ロイコトリエン受容体拮抗薬、抗アレルギー薬)
  • 気管支拡張薬(テオフィリン剤、β2刺激薬)

重症度により上記二つを組み合わせて治療を開始します。吸入薬は内服薬の量の1/100~1/1000で効果を示し、肺のみに効果をもたらす効果が多く副作用が少ないのが特徴です。よって基本は吸入薬が中心となります。

それでも改善が乏しい方や、発作予防が困難な方には他の内服薬を併用や、病態によっては抗IgE抗体などの抗体療法もあります。

最後に

喘息発作を防ぐためには、普段の生活を今一度見直す必要があります。家の中をこまめに掃除してハウスダストを減らし、じゅうたんや布製のソファ、ぬいぐるみなど、ダニの温床になりやすい環境を無くして、アレルゲンを排除することが重要です。過労やストレスは、喘息の大きな誘因になるので、疲れた時はあまり無理をせず、十分な休養と睡眠をしっかりとることを心がけてください。アルコールや煙草は、気道の過敏性を高め、炎症を悪化させる原因になるため、極力控えたほうがいいでしょう。喘息を悪化させないためにも、発作の誘因を避けるのはもちろん、過度のストレスをできるだけ減らし心身を常に良好な状態に保つことが大切です。

内科医長 池田元洋