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皮膚がんについて(平成27年1月号より)

「昨日テレビで足の裏のホクロの癌の話をみて、私もホクロがあるのでとんできました。これは癌ですか?」皮膚科の外来ではこういった言葉をよく聞きます。

皮膚がんも色々

ではみなさん、皮膚がんの種類をどのくらいご存じですか?

一般的に「癌」という言葉を使うときは、上皮系悪性腫瘍といって、体や内臓の表面を構成する細胞(上皮細包)からできるものを指し、骨や筋肉などを構成する細胞からできる悪性腫瘍を「肉腫」といいます。また、血液・リンパのがんもあり、最近では悪性腫瘍の事を総じて「がん」と表現することが増えています。

皮膚がんは皮膚にできる悪性腫瘍の総称で、「癌」「肉腫」「血液のがん」いずれもあります。

<癌に分類されるもの>

日光角化症、ポーエン病、有棘細胞癌、基底細胞癌、悪性黒色腫(以下メラノーマ)、乳房房外バジェット病、メルゲル細胞癌など

<肉腫に分類されるもの>

血管肉腫、隆起性皮膚線維肉腫、カポジ肉腫など

<リンパ腫に分類されるもの>

成人T細胞性リンパ腫/白血病、菌状息肉症など

こわい皮膚がん

皮膚がんの中でテレビや新聞でよく取り上けられるこわいがんとして、メラノーマがあります。もともとは欧米の白人の方に多いがんですが、現在日本人全体で年間の新規患者数は1200~1500人と増加傾向です。日本人のメラノーマの特徴として、約半数の方が足底などの手足にできる黒い色をしたタイプ(末端黒子型)です。しかし、中には爪の黒い筋のようなタイプや、赤いしこりのような黒くないメラノーマもあり、視診のみでの診断が難しい腫瘍です。

メラノーマは転移しやすいがんの代表で、全身に転移するとなかなか有効な治療がこれまではありませんでした。最近、日本で開発された新しい薬が承認され、治療の選択肢は増えましたが、まだまだ進行したメラノーマの治療は難しい状況です。そのため他のがんと同様、早期発見・早期治療をするに越したことはありません。

だからといって冒頭の方のように足底に黒いものがあればすぐ病院に!ではなく、まずは大きさを測ってみましょう。また、形や色もよく観察してみてください。メラノーマの早期病変を疑う所見は、思春期以降にできた黒いまたは茶色い7mm以上の病変です。また、形がいびつで左右対称でない、縁がぎざぎざしている、周りにしみだしがある、濃い色の部分と薄い色の部分があるなどの色調の不整や、一部に盛り上がりがあるのも、要注意です。

あ、私の足の裏にも気づけば黒いものがある!とドキドキしている方、お手元に鉛筆があれば、その後ろをあててみて下さい。鉛筆の大きさよりはみ出る方は、7mm以上ありますので受診をおすすめします。それよりも小さいサイズ、特に2~3mmであった方は定期的(2~3か月ごと)にサイズをチェックして、1~2年の内に5~6mm程度に大きくなるようなら受診をしてください。ただし、7mm以上の病変であっても後述しますが、ダーモスコピーという検査機器で観察し、良性のホク口の可能性が高ければ、定期的に様子をみることもできます。7mm以上の病変で、ダーモスコピーでメラノーマの可能性が高いと診断した場合は、2~3mm以上の余裕をつけて、なるべく全部の病変を一度に切除し、組織検査を行います。

なぜかというと、部分的にとる検査では診断がつきにくいケースが多く、また一部をとることでがん細胞を刺激してしまう可能性が0ではないために、こういった方法が推奨されています。先述の、爪のメラノーマや赤い色のタイプのメラノーマでも、やはり最終的に疑わしい場合は、全部切除して組織検査を行い診断します。組織検査でメラノーマと診断された後は、他の臓器への転移の有無や、病変の厚み(tumor thickness)、傷の有無をポイントに、病期(病気の進み具合)を判定し、病期に応じて治療法を検討していきます。

よく、「ホク口ががん化する事がありますか?」と尋ねられますが、これはなかなかお答えが難しい質問です。十数年前までは、ホクロからがんができるという意見が大多数でしたが、最近ではde novo説といって、ホクロとは関係なく皮膚にあるメラニン細胞ががん化してメラノーマができるという意見もあります。ただし、今後の研究によってはまた変わってくる可能性があります。メラノーマはその発症原因が特定されていないため、完全に予防することも難しいのですが、最も発生率が高いのが紫外線の強い地域に住む白色人種の方であることより、やはり紫外線が関係している可能性があります。

また、日本人で多い足底や爪などは、慢性的に刺激を受けることが影響しているかもしれません。メラノーマの予防だけに限りませんが、皮膚がんの予防としては、過度な日焼けをさけて、皮膚病変を針でつついたり、いじって取ろうとして、いたずらに刺激しないようにしましょう。

ダーモスコピー

先述の、メラノーマの診断において重要な役割を果たすダーモスコピーについても説明します。ダーモスコピーは特殊な拡大鏡で、10~30倍程度の拡大像を観察する診察方法です。特集表面だけを拡大するのでなく、皮膚の少し内部まで痛い思いをすることなく観察できます。

ダーモスコピーでは黒や茶色の皮膚の「しみ」や「できもの」を観察し、「色」と「かたち」を詳しく検討します。対象となるのは、色素細胞母斑(ほくろ)、メラノーマ、基底細胞癌、脂漏性角化症(老人性のイボ)、血管腫、血腫(血まめ)などです。

メラノーマの診断においては、色素の濃い部分と薄い部分によってできる色素の網目(色素ネットワーク)や、色素の粒(色素小球)などが規則正しく分布しているか、でたらめに分布しているかを観察し、総合的にメラノーマかどうか判断します。特に足の裏や手のひらの場合、ホクロでは指紋のへこんだ部分(皮溝)に、悪性黒色腫では出っぱったところ(皮丘)に色素沈着が認められます。こういった点が良性、悪性の判断に役立ちます。

また基底細胞癌では、樹枝状の血管や、木の葉のような色素沈着、灰青色色素沈着などが認められます。老人性のいぼでは、こういった所見はなく、茶色の筋(脳回転様構造)白い粒(稗粒腫様嚢腫)がみられます。

ダーモスコピーにより診断技術は向上していますが、これだけで100%の診断とはならず、最終的には組織検査も併せることで、診断できます。まだ当院ではダーモスコピーは導入されていませんが、来年度中には導入予定です。

付録:メラノーマと間違われやすい病気

1脂漏性角化症:老人性いぼの事。茶色で、表面がかさかさ、緑はなだらかな事が多い。顔や体に多発し、次第に大きくなったりもりあがったりするが数年単位でゆっくり大きくなる。

2:血腫:いわゆる血豆。赤紫色で全体が均一で、緑がギザギザの事もある。靴の圧迫などの外的刺激によって、爪の下にできたり、踵にできたりする。数週~数ヶ月で自然に消える。

皮膚科医長 内藤洋子