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むくんだときの話(平成25年10月号より)

1.むくみの症状について

「足が腫れて、靴が履けなくなった。」「まぶたが重く、腫れぼったい。」「二重まぶただったのが腫れて一重まぶたになった。」「手がばんばんに腫れてものが握りにくい。」「指輪がきつくなってとれない。」「そんなに食べていないのに急に体重が増えて靴下の跡が残っている。」こういった症状で外来を受診される方がおられます。その場合に、私は、まずは足を診察させていただきます。足の頸骨前面(すねの部分の堅い骨の部分)を押さえて指のあと(圧痕)が残るかどうかをみます。指で押さえたあとが残る場合は、「浮腫(むくみ)」です。

2.では、むくみとはどういった状態なのでしょうか?

その前に心臓と動脈、静脈の関係を簡単にお話します。心臓というポンプから大動脈という大きな管をとおって何回も枝分かれをしながら小さな管となり、全身の細胞に血液(血球成分や水分や栄養)をとどけるパイプラインのようなものが動脈と言えます。また、細胞からでた余分な水分や老廃物は、回収用の小さなパイプラインすなわち静脈に取り込まれ、やがて管と管が集合して大きな管となり、やがて大静脈を通って心臓に戻っていきます。心臓からでて抹消の細胞に血液を送り届ける管を動脈、細胞から回収された血液を心臓に送り届ける管を静脈と呼びます。また、動脈、静脈とは別のルートで余分な水分を回収する管があります。これは、リンパ管と呼ばれる管です。リンパ管も末梢の細胞から余分な水分などを回収しやがては管と管が集合し、大きな管となり最終的には、静脈に合流して血液と混じります。むくみとは、管に回収されずに細胞からしみでた余分な水が細胞や管の周りに過剰にたまっている状態です。むくみの正体は、「余分な水」であるといえそうです。

3.生理的なむくみの場合

むくみは、日常よくみられる症状でもあります。もちろん心配しなくて良い生理的な範囲のむくみもあります。特に女性の方に多いのが良性浮腫です。夕方頃に靴下のあとが残る、指で押さえると圧痕が残ると行った症状です。ですが、一晩たつとむくみは、消失しております。この場合は、あまり心配しなくて良い生理的な範囲でのむくみといえます。塩分をとりすぎないように説明することで夕方の足のむくみも改善することが多いようです。また、流行のリンパマッサージも足にたまった余分な水をリンパ管を通して血液の中に戻すことでむくみを改善させる方法になりうるようです。

4.病的なむくみの場合

しかし、同じような浮腫なのに治療すべき病気が隠れていることがあります。一晩たっても同じようにむくみが続く場合や食事はいつも通りなのに体重がどんどん増える場合など一過性ではなく改善しない浮腫は、治療すべき病気が隠れている場合があります。

5.むくみも放置しておくと大変なことになる場合もある

たかがむくみと放っておくと重篤な症状になる場合があります。むくみが強くなっていくと足だけでなく、顔や手、おなかの周り、腰回りなどの体幹部もむくみ始めます。さらに、むくみがつよくなると体の内部に水がたまり始めます。足や手、顔などの体の表面がむくむだけでは、間に合わなくなった余分なみずはとうとう体の中の空洞にしみだし始めます。体の中の空洞には、「腔(くう)」という字がよくつかわれております。むね(胸腔:きょうくう)に水がたまる場合を胸水、おなか(腹腔:ふくくう)に水がたまる場合を腹水、心臓(心外膜腔=心のう)に水がたまる場合を心のう水と呼びます。

胸水では、胸腔内にたまった水が肺を圧迫するため、肺の空気が抜け始めます。ちょうど浮き輪が外から押しつぶされ空気がぬけていくような感じです。胸水で肺が押しつぶされて空気が抜けた状態を圧排性無気肺と呼びます。そうなると肺でのガス交換がうまくいかなくなります。また、心臓は、肺からのガス交換を通して全身に酸素を送り込んでいるポンプの役目をしておりますが、むくみがつよくなると余分な水が邪魔をしてポンプがうまくまわらなくなります。また、無気肺のために全身に送るべき酸素の量が不足しているため心臓は、さらに負担を強いられます。そのうえ、心のう水もたまり始めるとさらに心臓に負担がかかることになります。心臓に余裕がなくなり(心予備能の低下)、ポンプ機能が破たんしてしまった状態が心不全といえます。心不全といえば、命を落とす危険性もある重篤な疾患です。むくみも重篤になると命に係わる場合があるということです。

6.むくみの原因は、心臓、腎臓、肝臓、血管、リンパ管、内分泌など

では、そういったむくみの原因とは、なんでしょうか?実は、たくさんあります。ですから簡単にあげてみます。むくみは、心臓、腎臓、肝臓、血管、リンパ管、内分泌臓器の異常などが原因となり生じます。こんなにいろんな原因があるのならば「むくんだときに何科に行けばいいのかわからない!!」という声が患者様から聞こえてきそうです。

7.むくんだときは何科を受診する?

でも安心してください。先ほど申し上げました臓器の専門科には、それだけさまざまな原因でむくんだ患者さんが受診されているわけです。専門ではないむくみの原因であってもこれらの専門科の医師は診察をしております。そして、原因を鑑別してより専門性の強い科に紹介、相談をしているということになります。

では、簡単にどの専門科にかかれば最初からスムーズにいく可能性が高いかという点で少しお話をしてみたいと思います。両方の足がおなじようにむくんでいる場合は、心臓、腎臓、肝臓、内分泌臓器の異常が多いようです。どちらか片方の足の場合は、血管やリンパ管の異常が多いようです。次に尿検査で蛋白尿がわりと出ている場合は、腎臓の異常が多いようです。もともと原因になりうる臓器の病気にかかっている場合は、やはりその臓器が原因でむくんでいる場合が多いようです。例えば、心筋梗塞で循環器科にかかっている場合は、心機能低下でむくんでいる場合など。

当院では、各種臓器の専門科がおりますのでむくみについて気になる場合は、ぜひご相談ください。また、蛋白尿が出ている場合などは、腎臓内科の受診もご検討ください。

 むくみ(浮腫)の対処方法

安静

安楽な体位(楽な姿勢)を工夫し、長時間の同一体位を避けます。正座や足を組んで圧迫しないよう注意し、衣類、寝具などの圧迫も避けましょう。

挙上

横になっている時は、むくみのある四肢(手足)が体の下にならないように、枕やクッションを入れ高くする(10cm弱で十分)ことが効果的です。

屈伸運動

腫れた腕や脚は、一日を通して出来るだけ無理のない程度に動かしましょう。マッサージ末梢(手足の先)から中枢(体の中心)に向かって手のひらで揉んだりさすったりするとよいでしょう。この時に摩擦によって皮膚を傷つけないようにする為、ローションをつけた方がよい場合もあります。

保温

むくんでいる皮膚は血行が悪く、冷感や痛みを感じる場合もあります。手浴、足浴で体を温めたり、電気毛布、湯たんぼ、使い捨てカイロ、温タオルなどで温めるのも効果的です。しかし、むくみがある場合は、皮膚感覚が鈍くなっているので低温やけどを起こし透析患者さまに聞いてみましたやすいので、手浴、足浴、電気毛布、湯たんぽ、使い捨てカイロ、温タオルは温度や時間に注意が必要です。

皮膚の保護

むくみのある皮膚は傷つきやすく、乾燥しやすい特徴があります。また、かゆみのために知らないうちに掻いてしまうことがあるので、爪による引っ掻き傷も注意が必要です。なるべく素肌をむき出しにせず靴下や手袋などで保護しましょう。そのほかにも、感染予防のために皮膚を清潔にし、乾燥予防のためにクリームやオイルで保湿しましょう。

むくみをとる方法は、原因によって変わってきます。病気が原因の場合は、当然ですが病気を完治させることが最優先となります。まずは医師に相談してください。

内科医長 小野田哲也