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貧血について

中国中央病院からの健康アドバイス 第49回

最も多い貧血についてお話します。

鉄欠乏性貧血というもので、赤血球に含まれるヘモグロビンという蛋白の材料の鉄が不足しているため引き起こされます。

鉄欠乏性貧血は貧血の原因を調べてもらうことが大切です。

原因は男性と女性で異なります(図参照)。女性では月経血が多いなどの症状(これには子宮筋腫や子宮内膜症があることも多い)が1/3、原因不明の鉄不足(摂取不足の可能性あり)が1/3を占め、その次に消化管出血が原因として挙げられます。一方、男性では6割以上が消化管出血であり、これには胃がん、大腸がんなどの大きな病気が隠れていることがあるので、特に男性の場合は原因を調べるようにしましょう。

鉄欠乏性貧血の原因

〈女性の場合〉

①過多月経(子宮内膜症を含む)

②子宮筋腫

③消化管出血

④原因不明または摂取不足

〈男性の場合〉

①消化管出血

②不明

治療について

原因の病気が見つかったら病気の治療を行いますが、それと並行してヘモグロビン10g/dlを切る方は鉄剤の治療を行います。鉄剤には注射剤と内服薬があります。

食事療法と鉄剤の治療について

外来で鉄欠乏性貧血の患者さんから食事をどうしたらいいか質問されることがあります。または薬を飲みたくないといわれる方もいます。

鉄を多く含む食材ですが、まずレバーは鉄の貯蔵場所ですので有効です。また肉類は中に血液を含んでおりヘム鉄が多いので鉄の吸収が良いです。ヒジキや小松菜、ホウレンソウも鉄を含むことで有名ですが非ヘム鉄であるため吸収効率が肉類ほどよくありません。またビタミンCは鉄を吸収されやすい形に変えたり、鉄の利用効率を良くします。最近は鉄の添加されたビスケットやフルーツバーなどのお菓子あり、このような鉄添加食品も有効です。

しかし普通の食事をされている方がいったん鉄欠乏性貧血に落入ってしまうと食事療法だけで乗り切るのは難しいこともあります。治療薬の鉄剤は食事に含まれているもののサプリメント(=補充)として考えればよく、例えば1日飲み忘れても大丈夫です。朝、昼、夕の何時に内服しても構いません。また安全性としては妊娠中も内服することができます。鉄剤を飲み始めると普通、1~2ヶ月で貧血は回復します。大切なことは、貯蔵鉄(フェリチン)が十分回復するまで飲み続けることです。それには4~5ヶ月掛かりますから、気長く飲み続ける必要があります。鉄欠乏性貧血は鉄剤を飲むことで必ず治ります。治らない場合は鉄欠乏性貧血でない場合、またはあまりに出血がひどく鉄剤が間に合わない場合などです。

最後に、貧血のない鉄欠乏と言われたら…

貯蔵鉄のフェリチンが低下しているがヘモグロビンが下がっていない方はこれに当てはまります。隠れ貧血、貧血予備軍といったところでしょう。この場合も食事療法や鉄添加食品を多くとり貧血に備えることは有効です。

内科医長  杉山 暖子