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腎不全と透析療法(平成23年11月号より)

皆さんは透析療法という治療を聞かれたことがありますか?

腎臓は体内でつくられた毒素を尿として体外に排泄していますが、その働きが10%以下になり(腎不全といいます)、尿毒症(毒素が腎臓から排泄されす体内にたまった状態)になった時に施行する治療法です。

今回はこの透析療法についてお話ししたいと思います。透析療法には血液透析と腹膜透析の2種類あり、慢性透析患者さんは、日本で29万人以上おられます(2010年末現在)。約97%の患者さんが血液透析の治療を受けておられ、毎年7000人~10000人の割合で慢性透析患者さんが増えています。その中で糖尿病の合併症である糖尿病性腎症の患者さんが最も多く、全体の約45%を占めていますので糖尿病の方は特に注意が必要です。

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血液透析はシャントという手術で太くした血管から血液と体外に出して、ダイアライザーといわれる血液浄化器の中で尿毒素を取り除き、また体内にもどします。通常、週3回、4時間の治療時間が必要です。治療時間はまだ長いと言わざるを得ませんが、透析機器の進歩により血液透析の身体的負担は格段に減少しています。

例えば、病状が比較的安定されている方は自分で車を運転して来院され、治療終了後自分で運転して帰宅されています。また、拘束される時間が長く、旅行などはできなくなるのではと心配される方も多いですが、事前に計画していれば日本中はもちろん、海外旅行も十分可能です。なお、血液透析は医療保険が適応されており、極端な経済的負担は必要ありません。

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腹膜透析は手術でおなかの中にカテーテルを挿入し、そのカテーテルを通しておなかの中(腹腔内)に透析液を入れ、一定時間貯留してから排液することで体内から体外に尿毒素を出します。この腹膜透析液の注入・排液の操作は、患者さん本人か、その家族が行います。また、透析液の改良・進歩により、患者さん個人の生活スタイルにあった腹膜透析のやり方を選べるようになってきています。腹膜透析も医療保険が適応されており、通常2週間に1回程度通院が必要です。

当院では腎不全のために透析治療が必要になった場合でも、患者さんが自分らしい生活を送っていただけるような治療を提供できるように努力しております。

一般内科部長 中迫幸男