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胎盤の位置異常~前置胎盤と低置胎盤(平成23年9月号より)

胎盤は、母体の子宮と胎児を結び、胎児への酸素、栄養の供給を行っている重要なものです。また、胎盤からは、hCG、hPL、エストログン、プログステロンなど妊娠の維持や胎児と母体との調節に必要なホルモンを産生しています。通常、子宮体部(子宮の上方)に受精卵が着床し、そこに胎盤が発生し、胎盤は子宮の上方にあるのですが、受精卵の着床の位置が低かったり様々な原因で、子宮の下方(内子宮口の上および近く)に胎盤ができることがあります。

前置胎盤

胎盤が、内子宮口に完全にかかっている状態を言います。前置胎盤では、子宮口に胎盤があるため胎児は下降出来ず、通常の経膣分娩はできません。(全例帝王切開となります。)子宮収縮があると、子宮口にある胎盤が一部はがれ出血がおこることがあり、妊娠30週ごろより出血する可能性が高くなります。そのため早産となることも十分考えられ、安静入院が必要になったり、出血が多ければ緊急で帝王切開となることもあります。また、前置胎盤の問題は、妊娠中たけでなく帝王切開の分娩時にもあります。それは、出血です。分娩後子宮は、収縮することにより胎盤がはがれたところよりの出血を止めてくれる機能がありますが、子宮の下方の前置胎盤の付着部ではその機能が非常に弱く、うまく収縮してくれず、大量に出血することがあります。(癒着胎盤の場合は、非常に出血が多く、母体の命のために子宮摘出を考える必要があります。)

低置胎盤

胎盤が、内子宮口の近くにある状態を言います。低置胎盤で問題となるのは、内子宮口から2cm以内に胎盤がある場合です。経膣分娩を試みた場合でも、出血のため、大部分が帝王切開となります。陣痛開始し子宮口が開いてくると、子宮口近くにある胎盤がはがれ出血がおこってきます。それ以外の場合でも、出血が多ければ緊急で帝王切開となることもあります。また、低置胎盤の場合、妊娠中に出血することは少ないですが、やはり分娩時は前置胎盤と同樣に出血が大きな問題となります。

当科では、妊娠24週前後に一度経膣超音波で、胎盤の位置異常と子宮口に異常がないことを確認しています。このとき、前置胎盤、低置胎盤が疑われた場合は(子宮が大きくなるため、胎盤の位置は妊娠後期にならないと確定できません。)もう一度30週前後に確認しています。再度疑われる場合は、必要により、安静、子宮収縮抑制剤投与など行い、最終的に、前置胎盤、2cm以下の低置胎盤の場合、可能であれば自己血の準備(4-5週前より外来にて自分の血液を貯血しておく方法)を行い、37週前後で帝王切開を行っています。前置胎盤の場合30週前後より出血が問題となることがあり、その場合はNICUのある病院に紹介しています。

分娩にとって最も問題となるのは、出血です。弛緩出血など予想できないものもたくさんありますが、可能な限り、妊娠中よりの状況を把握し、準備することが必要です。妊婦検診は、こういう点でも重要です。できるたけ決められた間隔での妊婦検診をお願いします。

婦人科部長 山本昌彦