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冬の皮膚のかゆみとスキンケア(平成22年1月号より)

冬になると、皮膚がカサカサして何となくあちこちがかゆい、ということがよく起きるようになります。

皮膚に発疹がなく、かゆみだけが出る病気のことを皮膚掻痒症といいます。特定の原因があることもありますが、皮膚の乾燥のために生じてくることが大半です。さて、「皮膚の乾燥」はどうして起こるのでしょう?

もともと、皮膚には脂を分泌して皮膚自身をしっとりさせる力を持っています。

この力は赤ちゃんのときに大きく、その後いったん低下した後、また思春期の頃から発達してきます。その後は30歳代以降またゆるやかに働きが衰えていきます。また、年齢とともに皮膚表面の角層に水分を保持する能力も低下して、皮膚は年齢とともに乾燥しやすくなっていきます。

日本は四季の移り変わりがあり、温暖で暮らしやすいところですが、季節によって温度や湿度の差はかなり大きくなります。秋から冬にかけては、温度が下がるだけではなく、空気中の湿度も減り、どんどん皮膚は乾燥してカサカサしてゆきます。特に害がないことも多いのですが、乾燥した皮膚ではかゆみを知覚する神経が皮膚の浅いところまで伸びているため、外からの刺激で簡単に刺激されてかゆみの生じやすい状態になります。また、皮膚の強い乾燥がある場合は湿疹(赤くてガサガサしてかゆい皮膚の病気)が出現してくることもあります。

主に気候に左右される皮膚の乾燥とかゆみですが、日常の生活の仕方でも差が出てくることがあります。

日本では、ゆっくりとお湯につかって手ぬぐいで垢をこすり落とすというスタイルのお風呂の入り方が一般的です。でも、これはせっけんのなかった江戸時代に発達したもの。現在、せっけんという強力な武器で垢を落とすことが多くなってきていますが、せっけんをタオルにつけて皮膚をこするとどうなるでしょう?つるつるになって気持ちがいいのですが、実はこれが曲者なのです。汗腺・脂腺の発達している若い人では、皮膚が乾燥してもじきに落ち着いてきますが、年齢とともに、一度乾燥するとなかなか皮膚はしっとりしないようになってきます。

お風呂やシャワーで体を洗うときには、タオル類は使わず、石けんを泡立てて手で体を洗うようにしましょう。石けんは、乾燥肌用のものを使うと後が乾燥しにくくなります。湯船に湯を張ってお風呂に浸かる場合には、乾燥肌用の入浴剤を使うとしっとりしてかゆみが楽なことがありますが、入浴剤には相性もありますので、試しながら使ってみるようにしましょう。この場合、風呂場の床が滑りやすくなることがありますのでご注意ください。熱いお風呂に入るとかゆみが強くなることが多く、お風呂はぬるめが望ましいです。お風呂に入ったあとは、背中・すねなどの乾燥しやすい場所に保湿クリームを外用します。

保湿クリームは、市販のもので自分に合うものがあれば何でもよいのですが、相性によっては症状が悪化することもありますので、トラブルが起きていないか注意しながら使う必要があります。アルコールは、かゆみが出やすくなるため、控えめにしておきましょう。

香辛料などの刺激物も食べるとかゆみが出ることがあります。下着は化繊のものはチクチクしてかゆみを引き起こすことがあります。なかなかチクチクが止まらないときは、下着を裏返して着て縫い目が皮膚に当たらないようにするのもひとつの手です。

暖房器具は、エアコンを使うと部屋がとても乾燥します。エアコンを使う場合は、加湿器を使う、洗濯物を部屋の中で干す、お湯をわかす、などして部屋の湿度を上げましょう。電気毛布の使用もかゆみを生じることがあります。足元だけを暖める、など工夫してみましょう。

 皮膚科部長 森下佳子