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労作性狭心症について(平成21年11月号より)

われわれ循環器内科医が診察、治療する病気は高血圧、虚能性心疾患(狭心症、心筋本更塞)、心不全、心臓弁膜症、心筋症、不整脈などが主となっておりますが、その中でも最近増加傾向にある、虚血性心疾患、中でも労作性狭心症について述べたいと思います。

労作性狭心症とは簡単に言うと、心臓を栄養する血管(冠動脈)が動脈硬化等の器質的狭窄によって一過性の虚血状態となる疾患です。

動脈硬化の原因としては高脂血症、高血圧、糖尿病、喫煙、肥満などの生活習慣関連疾患が挙げられ、わが国で増加傾向にあり、しかも個人に多因子が集積する傾向を認めます。冠動脈疾患による死亡率は現在横ばいですが、将来的に增加が懸念されており、メタボリックシンドロームを含めた危険因子全てへの強力な介入による予防対策が重要と考えられています。

症状としては労作時の前胸部圧追感や左肩への放散痛、呼吸因難、嘔吐、眩暈などがあります。また、これらの症状は安静にて数分で消失するという特徴を持っています。しかし、一番の特徴は、多くの症例で胸部症状の出現している最中でなければ心電図や、心エコーなどの検査に異常所見として現れないということです。つまり、胸部症状が昨日ありましたと病院を受診しても、受診時に胸部症状がなければ、検査に引っかからないということになります。この特徴が、労作性狭心症の診断を困難にしている原因なのです。そこで医師は慎重に病歴を聴取し(1.胸痛がいつから出現し始めたか2.どの程度の労作で症状が出現するか3.症状の持続時間と頻度4.咽頭部、頸部、肩、腕への放散はないかどうか5.ここ最近の増悪傾向はないかどうかなど)しかるべき検査を施行し診断しなければなりません。

検査の方法は患者様の状態や年齢、活動度によって様々な方法があり、当院では施行できないものもありますが、ここまでの話でピンときた方は一度、受診し自分に合った検査を受けてください。

当院に受診された方は大阪弁の循環器内科医が丁寧な大阪弁(恐くないですよ)で「ここ最近、階段を駆け上がったり、いつもより重たい物を持つたりしたときに胸がキューっとしたりすることはないでっか?」とか、「最近、調子はどないでっか?」とお聞きします。患者様は気をつかって「ぼちぼちでんなあ」と答える必要はなく、本当に異常ないかどうかを教えてくださいね。

患者様が言いにくいことや、聞きにくいと感じることのないような外来を目指してやっていきたいいと思います。また、出来るだけ難しい専門用語は用いず、分かり易い外来を行っていきたいと考えております。まだまだ未熟な点も多数あると思いますが、今後とも宜しくお願い申し上げます。

図:狭心症の症状

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内科医長 中野学