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非結核性抗酸菌症

中国中央病院からの健康アドバイス 第42回 

以前より検診の胸部レントゲンにて炎症性変化を指摘されていましたが症状がないため放置していました。しかし最近になり咳、痰が出現するようになり、内科を受診し喀痰の検査を行ったところ非結核性抗酸菌が認められました。一般的には結核とは何が違うのでしょうか。また、治療方針はどのようになるのでしょうか?

非結核性抗酸菌症は人から人への感染は認めません。

現在日本においては非結核性抗酸菌症の罹患率は人口10万あたり5.7以上と推定され、増加傾向にあります。非結核性抗酸菌症はもともと環境中に普遍的に存在する菌です。

そのために喀痰などの臨床検体中から認められてもその時点でその菌による感染症と診断することはできません。診断基準については①臨床的基準(画像所見など)と②細菌学的基準(2回以上の異なった喀痰検体での培養陽性など)を満たして確定診断となります。非結核性抗酸菌症にはたくさんの種類がありますがマイコバクテリウム・コンプレックス(マイコバクテリウム・アビウムとマイコバクテリウム・イントラセルラーレを合わせたもので一般的にMAC症といわれています。)という菌種が約75%占め、次いでマイコバクテリウム・カンサシーが約15%を占めます。

同じ抗酸菌症である結核との大きな違いは人から人へ感染しないこと、病気の進行が比較的緩やかであることなどが挙げられます。

非結核性抗酸菌症の症状は自覚症状が全くなく、胸部レントゲンを撮影したときに偶然見つかる場合も多くみられます。症状として最も多いのは咳で次いで痰、微熱、倦怠感などです。症状が進行すると、呼吸困難、血痰、食欲不振などがみられます。

治療は多剤を長期間使用しますが軽症例では対症治療法で経過観察をすることも

非結核性抗酸菌症の治療については一般的には咳、痰などの自覚症状が強い場合や画像的に進行性の病変の場合治療の適応となりますが、このとき画像の重症度、年齢などを考慮して行います。病変が両側肺広範囲にある場合などは薬物療法を考慮しますが病変が非常に限局している場合は外科的に手術療法を考慮します。

病変の進行が緩除な場合、対症療法で経過観察をすることもしばしばあります。使用する薬剤は基本的に多種類の薬剤を長期間使用します。マイコバクテリウム・コンプレックス症には主にクラリスロマイシン、リファンピシン、エタンブトールという3種類の薬剤を使用しますが基本的には菌が検出されなくなってからさらに一年程度薬剤を継続する必要があります。薬剤の副作用としては下痢、視力低下、発疹、食欲不振、しびれなどがあり、注意を要します。

症状が重篤な場合は薬剤を一時的に中止することもあります。中止しても比較的進行がゆるやかであるため悪化せずそのまま経過することも少なくありません。体調を整えて焦らずじっくりと治療することが大切です。

 内科医長 岡田俊明