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HIV感染症・後天性免疫不全症候群

中国中央病院からの健康アドバイス 第38回 

エイズについて相談を受けましたが、どのようにアドバイスをしたらよいでしょうか?

エイズ(後天性免疫不全症候群acquiredimmunodeficiencysyndrome;AIDS)は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が感染し、十年程度かけて徐々に免疫不全状態となり、日和見感染(弱い病原体による感染症)や特有の腫瘍、消耗性疾患などを併発した状態です。

HIV感染の経路には、性的接触による感染、母体から子供への感染、輸血による感染などがありますが、現在日本で最も多いのは性的接触による感染です。パートナーの性別にかかわらず、不特定多数のパートナーとの接触がある場合、HIV以外の性行為感染症(梅毒など)にすでに感染している場合、性器や肛門の粘膜に傷がある場合にはHIVの感染の危険は高くなります。

HIVは感染当初ウイルス血症を起こして多くのリンパ節に至り、以後リンパ節に潜伏しながら活動的に増殖し、CD4陽性Tリンパ球に感染してその減少を引き起こし、宿主の免疫力を低下させていきます。血中のウイルス量も当初のウイルス血症後にいったん低下しますが、その後は増加していきます。感染当初は風邪のような症状や皮疹が出ることがありますが、以後は特に症状のない状態が10年前後続きます。この間に徐々に免疫能力が低下していき、免疫不全状態となると体重減少・微熱・下痢を生じたりカンジダ症、カリニ肺炎などの日和見感染を生じたりするようになってきます。

HIV感染の診断は、HIV抗体検査(血液検査)で行うのが基本です。HIVに感染すると、しばらくしてからHIVに対する抗体が検出されるようになります。この感染早期の、抗体がまだ検出されない期間をウィンドウ期間と呼び、1か月~3か月と個人差が大きいために、感染の機会から3か月以内の検査で陰性となった場合には、感染機会から3か月以上たってからの再検査が望ましいです。

HIV抗体検査は、保健所や医療機関で受けられます。

保健センターでは無料・匿名で検査を受けられますが、日にち・時間を事前に確認する必要があります。医療機関では有料となります。数時間で結果が出る迅速検査もありますが、これはスクリーニング検査であり、陽性の場合は確認検査が必要なため、1~2週間の時間がかかります。

HIV感染が確定した場合は、ウイルス量や免疫機能、併存疾患等の検査、また日和見感染症が疑われる場合にはその検査を行い、治療方針を検討していきます。HIV感染症の治療開始が必要な場合は、抗ウイルス効果、予期される副作用、服薬上の条件などを検討して薬剤を決定し、3剤以上の薬剤を組み合わせて内服します(多剤併用療法)。

体内のウイルスの複製を押さえ続けることが目的で、ウイルス量が検出感度以下になっても、内服を中止するとウイルス量が増加し薬剤耐性を持つウイルスが出現する危険性があるため、中止せずに内服を続けていく必要があります。現在の抗HIV療法は、HIVの増殖を抑制し健康な生活を送れるようになってきていますが、ウイルスを体内から排除するものではありません。

長期に亘る内服治療による患者さんの負担は大きく、これを軽減するために社会的資源を利用することもあります。

日本ではHIV感染者は増加の一途をたどっており、しかもエイズを発症してから医療機関にかかるケースが多いことが問題となっています。日和見感染症はいったん発症すると抑制にてこずることが多く、日和見感染症発症の前からHIVのコントロールを行っておく必要があります。

また、感染に気がつかないまま性行動を繰り返す場合、感染者を増やしてしまうことになります。Safesexの啓発、HIV感染は早めにコントロールすれば死に至る病ではないことの周知、早め早めの検査・受診の推進、治療開始後は内服を中断せずに根気強く続けることの助言が必要です。

 皮膚科部長 森下佳子