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早期胃癌の治療

「お腹を開けずに胃カメラで癌を切り取る治療法 ESD」

早期胃癌とは?

胃癌は胃の粘膜(胃袋の内側の表面)にできますが、大きくなると胃の内側におできのように盛り上がっていったり、胃の壁の中に深く進んでいったりします。そして、ついには胃の壁の外へ突き出したり、お腹全体に癌細胞が散らばったり、リンパ節や他の内臓へ転移を起したりします。胃の壁は、粘膜層→粘膜下層→筋層と大きく3層に分けることができますが、早期胃癌とは、このうち、癌が〝粘膜下層まで〟の浅い 範囲にとどまっているものを言います(図1)。

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胃カメラで治療できる胃癌とは

すべての早期胃癌が胃カメラで治療できるわけではありません。例えば、癌が粘膜下層へ及ぶと、大きさにもよりますが、1~2割の確率でリンパ節へ転移を起すため、胃カメラだけでは取りきれなくなります。日本胃癌学会が発表している『胃癌治療ガイドライン』では、胃カメラで治療できる(=直すことの出来る)胃癌を、次のように定めています。
⑴ 深さ…粘膜層までにとどまるもの
⑵ 癌細胞の種類…分化型癌(細胞の形や並び方が粘膜の元の構造を残しているタイプ)
⑶ 大きさ…直径が2cm以下
⑷ 潰瘍を併発していないもの

ESDとは

胃癌を胃カメラで治療する方法としては、従来、内視鏡的粘膜切除術という方法が行われてきました。これは、〝スネアー〟という金属性のループ状の器具で癌を縛り、高周波電流を流して焼き切るという方法でしたが、限界が大きく、治療不能な癌も少なくありませんでした。

近年、胃カメラによる手術用のための新しい専用の電気メス等が開発されたことにより、胃の壁のうち、内側の表面だけ(粘膜層と粘膜下層の一部)を薄く切り剥していくというESDが誕生しました。ESDの手順としては(図2)のようになります。

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ESDのメリットとは

ESDのメリットとしては、ナイフが高性能となったため、従来よりももっと正確に、しかもどんな場所にあってもどんな形をしていても癌を切り取ることが出来るようになったことです。また、取ることの出来る病変の大きさに制約もなくなりました。つまり、上記の⑴~⑷の条件を満たす早期胃癌であればほとんど治療が可能になったばかりか、理論的にはどんな大きさの癌でも切除できるようになったわけです。 ただし、胃の壁の厚さは5mm程度とたいへん薄いため、出血を避けながら胃の壁にできるだけ傷を付けずに癌だけを切り取るためには、胃カメラやナイフの操作に細心の注意を払った高度の技術と、スタッフ間のチームワークが必要となります。

おわりに

胃癌は現在、日本人の癌の死亡率の中で上位を占めています。胃カメラだけで癌を切除し治癒させるためには、症状のない早期胃癌のうちに、それもできるだけ小さい段階で発見することが必要です。そのためには、特に40~50歳台以降の方は、検診として積極的に胃カメラの検査を受けることをお勧めします。

消化器内科部長 万波智彦