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妊婦検診について(平成25年5月号より)

はじめに

産婦人科は、産科、婦人科および不妊症を主体とする内分泌の3つの分野に大きく分かれ、現在3名の常勤医と1名の研修医で診療を行っています。当院は、血液内科、リウマチ・膠原病内科、内分泌・甲状腺内科、腎臓・糖尿病内科に通院中の患者さんが多数おられ、これらの疾患を合併したハイリスクな妊婦さんが多いのも特徴です。内科医と連携をとり、適切な妊娠継続ならびに分娩方法を選択しています。大きな筋腫や前置胎盤や低置胎盤などの大量出血が予測される症例にはあらかじめ自己血貯血行っています。止血困難な症例に対しては、放射線科専門医による子宮動脈塞栓術も行っています。分娩は自然分娩が基本で無痛分娩は行なっておりません。妊娠35週未満で早産が予想される妊婦さんはNICUのある福山医療センターに母体搬送になります。

最近3年間の分娩数(帝王切開)の推移です(表1)。2010年604件、2011年569件、2012年518件と当院の分娩件数は減少しています。これは、福山市民病院の分娩再開、福山医療センターの新築移転による分娩数の増加が原因と思われます。

出生前診断

少子高齢化の増加に伴い、出生前診断を希望される患者さんが増えています。40歳以上になると、染色体異常の確率は1/100以下となります(表2)。出生前診断には、これまでに行っていた羊水検査、血液検査に加え、新たに本年4月より全国で認定された15施設中の8施設で新型出生前診断がはじまりました。

当院では、高齢妊娠をはじめとする胎児染色体希望の患者さんに対し、羊水検査、血液検査(トリプルマーカ一)を行っています。一方、新型出生前診断は、妊婦の血液検査によって胎児の染色体異常が高い確率で判明します。採血だけなので母体の負担は少ないですが、費用は20万と高額で、検査結果が陽性だった場合、確定診断には羊水検査が必要です。また、倫理的な問題もあり、安易な中絶につながらないように、認定施設において遣伝カウンセリングなどが必要となっています。

風疹

ここ数年、関東を中心に風疹が流行しています。妊娠初期~20週頃までに母体が感染すると先天性風疹症候群(眼症状、心疾患、難聴)の赤ちゃんが生まれる可能性があります。妊娠初期検査で風疹抗体検査をすべての妊婦さんに行います。異常高値(256倍以上)の患者さんは再検査を、抗体のない患者さんは、分娩後にワクチン接種を推奨しています。

胎児超音波検査

妊婦さんの健診は、妊娠11週末までに3回程度、妊娠12~23週末までは4週毎、24~35週末までは2週毎、それ以降は1週間毎に定期的に行っていきます。その際、超音波検査はほぼ毎回行っています。妊娠初期は、頭蓋骨欠損、無脳症など生命予後不良な形態異常を中心に見ていきます。その他、妊娠10週前後での胎児後頸部の肥厚は、染色体異常との関連が言われています。胎児の臓器は妊娠12週ごろまでにはほぼ完成し、妊娠20週以降胎児形態のスクリーニングが可能となります。胎児超音波スクリーニングとして胎児推定体重の計測、羊水量の異常、胎児形態異常や胎盤位置異常を検査しています。さらに子宮内胎児発育遅延の際の胎児血行動態(パルスドップラー)の計測や毎回ではありませんが、3次元画像である4D超音波による胎児エコー(図1)も行っています。また、先天性心疾患は約1%に見られ、胎児形態異常の中で最も多い疾患です。出生後早期に治療を要する疾患でもあります。通常のスクリーニングで四腔断面、3血管断面、3血管気管断面が基本断面として使用されています。

分娩取扱施設の減少、訴訟の増加など産婦人科の取り巻く環境は決して良い状況とは言えませんが、近年女性医師の産婦人科志望者が増加し、明るい兆しが見えてきています。今後も積極的に新しい知識、技術を習得しつつ、安全で標準的な治療を患者様に提供できるよう日々努力していきたいと考えています。

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産科部長 徳毛敬三

助産外来を開設して ~母子の力を生かせる出産をめざして~

助産外来の開設

当院では2013年1月より助産外来を開設しました。「妊婦が産み育てる力を身につけ、安心して楽しい妊娠・出産・育児期を過ごせるように助産師が妊婦健診および保健指導を行うことで、妊娠・出産・育児期の継続看護を行う」ことを目的に、現在3名の助産師が担当しています。助産外来は、単に助産師が担当する外来というのではなく「助産=産むことを助ける」という意味があります。

核家族化した現代社会の中で、「おばあちゃんの知恵袋」のような妊娠出産に向けた生活習慣も伝わりにくくなっています。またインターネット情報や育児雑誌が氾濫する中で多くの妊婦さんは「正しい知識」「自分に合った方法」を求めているように思います。反面、出産に来られた産婦さんの中には、入院されても「どうしたらいいのかわからない」「産むのがこわくてたまらない」などと言われる方がおられます。出産に対するネガティブな思いはスムーズな出産の妨げとなることもあります。

産む力と生れる力

出産はよく登山にたとえられます。何の準備もなく登山をされる方はいません。登山に必要な体力や知識・道具をそろえ、登頂するまでの道のりや頂上での感動をイメージしながら心身の準備を整えていくことでしょう。出産も同様、妊娠中からの準備は欠かせないものです。助産外来では、通常の妊婦健診を行いながら助産師が個々の妊婦さんに合わせ、出産に向けた心と身体の準備についてお話しします。お母さんはもともと「産む力」を、赤ちゃんは「生まれる力」を持っています。それを引き出すためには、お母さんが自分自身の身体や心を理解し、赤ちゃんと向き合いながら出産育児に対して前向きになることが大切です。前向きな気持ちは、食生活・連動・保温・休息といった日々の積み重ねからつくられていきます。助産師とともに時間をかけて一緒に考えていきましょう。

助産外来の対象となる妊婦さん

助産外来の対象となる妊婦さんは、妊娠初期に記入していただく「妊娠リスク自己評価表」で3点以下、帝王切開・子宮の手術の既往がない、合併症がない等、医師の妊婦健診で異常がないと診断された方となります。助産外来に興味のある方は、医師・助産師・産婦人科外来スタッフに声をおかけください(詳しくは外来産婦人科に設置しておりますパンフレットをご参照ください)。また、助産外来対象でない妊婦さんは妊婦外来相言炎室もありますので、お気軽にお立ち寄りください。

母子にとって、ご夫婦にとって、ご家族にとって出産が満足いただけるものであること、そしてスムーズに育児がスタートできますようお手伝いさせていただきたいと思っております。スタッフ一同お待ちしています。

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4きた病棟 看護師長 喜多村道代