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悪性リンパ腫

中国中央病院からの健康アドバイス 第55回

はじめに

悪性リンパ腫は、血液疾患を代表する白血球(リンパ球)のがんです。悪性リンパ腫には大きく分けて、非ホジキンリンパ腫とホジキンリンパ腫とに分類されます。日本では、ほとんどが非ホジキンリンパ腫に分類され、9割にも達します。一方、ホジキンリンパ腫は1割ほどにしか満たないですが、抗がん剤を中心とした治療を受けることで、治癒する可能性の高い疾患と考えられています。大半を占める非ホジキンリンパ腫はと言うと、ホジキンリンパ腫ほどではないにしても他臓器のがんと比較すると治る可能性が非常に高い病気と言えます。非ホジキンリンパ腫には、30種類、亜分類も含めると50種類以上の疾患に細分類されます。細分類されたそれぞれで、病態や治療法が異なり、また、予後も同じではありません。

疫学

2009年の部位別がん死亡数は、悪性リンパ腫が全がん腫の中で11位でした。年齢調整死亡率で見ると男性は10万人あたり5.1人、女性は2.6人となります(2009年)。悪性リンパ腫は、ここ数年死亡率が、とりわけ女性で低下してきています。その理由としては、医学の発展により、新しい抗がん剤(とくに分子標的薬)が開発され、死亡率の低下に寄与したと考えられています。新規抗がん剤が今後も複数上梓することがわかっていますので、死亡率は緩やかに低下していくものと思われます。また、男性の年齢調整罹患率は10.9%(2005年)、女性のそれは6.6%と年々上昇傾向にあります。このことは、男性の1割以上が、生涯で悪性リンパ腫に罹患することを意味します。

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 出典:財団法人がん研究振興財団より

症状

外来には、「リンパ節が腫れて、押さえると痛い。」とがんを心配になって来院される患者さんによく遭遇します。その場合、良性であることがほとんどです。なぜなら、腫瘍性(がん)であれば、無痛性であるのが一般的だからです。リンパ節が腫れる病態としては、炎症性か腫瘍性のどちらかとなります。炎症性の場合は、リンパ節を押さえると痛みを伴います。悪性リンパ腫の症状としては、表在のリンパ節が腫れる、発熱がある、ここ最近体重が減少するといった症状が特徴的となります。意外に思われますが、リンパ節以外に病変ができることも半数近くあります。胃や大腸といった消化器から、骨髄や脳内にまで全身のあらゆる臓器に発症します。

病気の原因

病因は、リンパ球細胞内のDNAがダメージを受け、損傷されたDNAが修復されずに遺伝子の異常へと進展し、発症します。残念ながら、発症を予防する方法は今のところありません。DNAがダメージを受ける原因で一番多いのは、加齢によるものですが、ほかに肝炎ウイルス、EBウイルス、成人T細胞白血病/リンパ腫ウイルスといったウイルスがあります。ほかにも放射線や抗がん剤が原因となることもあります。また、胃癌や胃潰瘍の原因でも有名なヘリコバクター・ピロリ菌なども発症の原因となります。

治療

基本は、限局期と進行期に分けて治療法を考えます。血液のがんですから、手術による治療法はまれで、抗がん剤による全身投与(内服や注射)が一般的となります。また、悪性リンパ腫は放射線の感受性が非常に高いので、抗がん剤と併用して治療されることも多いです。造血幹細胞移植は、現状ではまだ一般的な治療とは言えません。主な治療法を挙げます。非ホジキンリンパ腫では、CHOP療法(±リツキサン)、ホジキンリンパ腫には、ABVD療法が標準治療となります。

最後に

悪性リンパ腫は、日進月歩の医学に伴い、以前と比べると診断が細かく、より専門化されています。細分類された病態に応じて、治療法の選択も一様ではなく、専門的かつ緻密なものとなっています。今後かりに、「悪性リンパ腫」と主治医から告知されるようなことがあったなら、血液内科専門医をなるべく早めに受診してください。中国中央病院では、血液疾患の入院患者数が平均50余名にもなります。4名の血液専門スタッフと後期研修医1名が、日夜診療に鋭意取り組んでおります。いつでも、ご相談ください。

血液内科部長 木口亨