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子宮頸がんとHPVワクチン

中国中央病院からの健康アドバイス 第51回

子宮頸癌の疫学

日本では毎年約15,000人の女性が子宮頸がんにかかり、そのうち約3,500人が死亡されます。しかも他のがんとは異なり、30歳代までの若い方に急増しており、乳がんの倍以上の発症率です。多くのがんの原因が分かっていないのに対して、子宮頸がんの原因は判明しています。子宮頸がんはヒトパピローマウィルス(HPV)の感染で起こります。

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HPV

HPVは皮膚や粘膜にいるごくありふれたウィルスであり、イボの原因ウィルスとして知られていました。1980年代後半にHPVが子宮頸がんの原因であることが解明され、今ではHPVには100種類以上の種類があること、そのうち子宮頸がんの発症に関係するのは15種類ほどであることが判明しています。HPV感染の多くは性交渉(手からの感染もあります)によるものであり,約80%の女性がHPVに感染し、そのうち約90%は自己免疫の力で排除できるとされています。しかしHPVに感染した約10%の女性は持続感染となり、前がん状態を経由して子宮頸がんとなります。なお男性も女性と同程度HPVに感染しますが、陰茎がんの頻度は子宮頸がんに比べると非常に低率です。また感染したHPVを治療できる薬剤はなく、感染予防が大切となります。

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国立がんセンターがん対策情報センター、人口動態統計(厚生労働大臣官房統計情報部)国立がんセンターがん対策情報センター

1)祖父江友孝ほか:がん・死亡動向の実態把握の研究(平成18年度)

2)厚生労働省科学研究費補助費第3次対がん総合戦略研究事業がん罹患・死亡動向の実態把握の研究

平成18年度総括・分担研究報告書(主任研究者祖父江友孝),2007年4月公開

HPVワクチン

発がん性HPVのうち頻度が高く、がん化しやすい(いわゆるタチの悪い)16型と18型に対する感染予防効果があるのがHPVワクチン(商品名:サーバリックス)です。最も効果的な接種方法は、性交経験する前の10歳以上の女児に投与することですが、30歳代までの女性には積極的に投与すべきとされています。HPVワクチン接種で、感染予防効果は約20年継続するといわれており,子宮頸がんやその前がん状態になりにくくなることも証明されています。しかし子宮頸がんの3割程度はHPV16型や18型とは異なるので、ワクチン接種を受けても子宮頸がんの検診を受けなくてもよいことにはなりません。

今年から自治体により異なりますが、ある一定の年齢層の女児(多くは12-15歳)におけるHPVワクチン接種へ補助が出るようになりました。将来的には中学校1年生のみが補助対象になるのでは?と噂されていますので、特に思春期の女児には早めに接種することをお勧めしています。

産科部長 青江尚志