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蛋白尿は腎臓からのメッセージ

教えてDr.!!9

近年、CKD(Chronickidneydisease、慢性腎臓病)といわれる疾患概念が導入されました。腎臓障害の早期発見と、人工透析を必要とする末期腎不全への進展予防のためです。CKDは①尿の異常所見(特に蛋白尿)と、②糸球体ろ過量(腎臓から老廃物を尿へ排泄する能力)の低下で診断されます。わが国のCKD患者数は1,330万人(成人人口の約13%)と言われ、人工透析を受けている末期腎不全患者数は、30万人(国民の400人に1人)以上に増加しています。

今回はCKDの診断で重要な項目となっている蛋白尿についてお話します。健康診断の尿検査で蛋白尿という項目をご存知でしょうか。腎臓には毛細血管が毛玉のように集まってできた糸球体という尿をつくる微細な構造があり、1つの腎臓に100万イ固以上あると言われています。尿はその糸球体という組織でろ過されてつくられますが、健常人の尿には通常ほとんど蛋白が含まれていません。

尿の濃さにもよりますが、蛋白尿が1+以上と判定された場合、基準以上の蛋白が尿に含まれていると考えられます。したがって健診などで蛋白尿1+以上を指摘された場合、腎臓の中の糸球体などに何らかの異常が起こっている可能性があります。精密検査では1日24日寺間の尿をすべてためる検査(蓄尿検査)を行い、1日の尿に含まれる蛋白量を調べて、0.5g/日以上あれば、腎生検(腎臓組織を特殊な針で採取する)という検査を行うことがあります。ただ、起立や運動後、さらには発熱などによっても蛋白尿が一時的に出現することがありますので、腎臓の病気によって出現したものと区別する必要があります。健診で起床時尿(朝、起床直後の尿)を検体として採取することがあるのは、それらの影響を受けにくくするためです。腎臓病というと、足や顔の浮腫(むくみ)などの症状を思い浮かべる方が多いと思いますが、ネフローゼ症候群など多量の蛋白尿が出現する疾患以外は、必ずしもむくみの症状が出るとは限りません。

以上のように蛋白尿は腎臓の異変を知らせるために送られてきたメッセージかもしれませんので、自覚症状の有無に関わらず、健診などで蛋白尿を指摘されたら、内科(腎臓内科)に受診して相談されることをおすすめします。

一般内科部長 中迫幸男