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腎臓と肝臓について 人間ドックの活用2

教えてDr.!! 

腎機能について

腎臓の働きは、

  1. 血液をろ過して、身体の老廃物を尿として体外に排出
  2. 体液の量や、電解質のバランスを調整し、血圧をコントロール
  3. 血液を作るホルモンを分泌
  4. 骨をつくるビタミンDを作る

などがある。
腎不全になれば、これらの機能が低下し、透析治療などを必要とすることになる。

腎臓の機能を示す指標は、クレアチニン=Crをもとに計算された推定糸球体ろ過量=eGFRが用いられている。Crの上昇は腎機能低下を意味するが、性別や年齢、体格などによって、同じ数値でも腎機能の程度が異なる。

また、初期の腎機能障害が判りにくいため、Crと性別、年齢から計算されたeGFRで腎機能を示すようになった。eGFRは低いほうが腎機能が悪く、60未満で異常と判定される。eGFRが60未満になっている人、特に蛋白尿がある人は、腎臓の精密検査を受けることと、腎臓を悪くする要因を治療管理することが大事になる。

腎臓を悪くする要因としては、高血圧、糖尿病、脂質代謝異常、肥満などがある。また、腎機能が低下している人は、心筋梗塞や脳卒中などが起こりやすくなっていることも知られており、注意を要する。軽度の蛋白尿や腎機能障害は、無症状であるため、自覚症状がないからといってほうちしないことが大事となる。

肝機能について

肝臓のはたらきは、1.食べたものを体に必要なものに作り替える。2.薬や体に有害な物質を解毒。3.消化の助けとなる胆汁をつくる。などの働きがある。検診での肝機能としては、AST(GOT)、ALT(GPT)、yGTPなどがある。ASTとALTは30以下、yGTPは50以下が正常範囲である。

その他、肝炎ウィルスの検査のために、HBs抗原とHCV抗体を測定している。

これらが陽性の場合は、ウィルス性肝炎の可能性が高いため精査を必要とする。肝炎ウィルスが陽性で、ALTが31異常は治療が必要となる。しかし、肝機能が悪くない場合でも、肝臓癌の産むをみるためのエコー検査や血液の腫瘍マーカー、より詳しいウィルスの検査を定期的にうける必要があるため、かかりつけ医を持って定期検査・治療を受ける必要がある。

また、血液検査の血小板=PLTの数値を確認しておく。血小板の低下は、慢性の肝機能障害の目安となる。正常の血小板数は20万異常であり、血小板が低いほど肝障害が進行していると考えられる。特に15万以下では、要注意である。

肝臓癌は、肝障害が進行すればするほど頻度が高くなるが、肝機能が問題ない場合でも発症していることもあり、定期的な検査を必要とする。

アルコール性肝炎の場合には、yGTPの高値や、AST>ALTの肝障害を伴うことが多い。この場合の治療はアルコールを控えることであるのは言うまでもない。

ウィルスがなく、アルコールを飲まない人でも、脂肪肝になれば、肝障害を引き起こす。これらの人は、NAFLD(非アルコール性肝疾患)と診断される。肝臓の組織を取ってくる肝生検査によって、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)と診断されることもある。この脂肪肝も進行すると肝硬変、肝臓癌ができることがある。多くの場合は、メタボリックシンドロームと共通の問題があるため、生活習慣の見直しなどが必要となる。

最近、糖尿病患者さんの死因として、肝臓癌が8.6%、肝硬変が4.7%であり、合わせると13.3%、つまり8人に1人が肝臓疾患で亡くなっているという報告があり、心臓脳血管疾患や腎臓病などとともに気をつける必要性が高いことがいわれている。

これらの肝疾患の中には、いわゆる脂肪肝から肝硬変および肝臓癌がかなり含まれている可能性が指摘されている。またウイルス性肝炎の場合でも糖尿病があると肝臓癌の発生リスクが上がっているといわれており、糖尿病+肝疾患では、さらに厳重に治療、経過観察が必要となる。

健康管理科部長 平田教至