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胸腔鏡下肺がん手術の現状等について

はじめに

昨今、外科手術の安全性に関するショッキングな報道を目にされることも多いと思います。本稿では内視鏡外科手術、特に胸腔鏡下肺がん手術の現状等を記載したいと思います。

がん手術の歴史

肺は形態上、右肺と左肺に分かれ右肺は上葉・中葉・下葉の3つに、左肺は上葉・下葉の2つに分かれます。さらに機能的な面からは各肺葉はさらに細かく区域・亜区域に分けられます。

肺がんに対する手術療法は1930年代には片肺全摘術(肺がんのある側の肺、右肺のがんの場合右肺切除)が行われるようになりました。1950年代からは肺葉切除術(肺がんのある肺葉、右上葉肺がんならば右上葉切除)が行われるようになりました。現在では、以前に比べより早期がんが発見される機会が増加したために区域・亜区域・部分切除などの縮小手術が行われることも増えてきました。

背中から脇腹にかけて20~30cnほど皮膚を切開し、広背筋・前鋸筋・肋間筋等の筋肉を広い範囲にかけて切離し、肋骨も1~2本切断して上記の様な手術を行う時代が長く続いていました。しかし手術機器の発達にともない1990年代ころからより小さな傷で手術を行える胸腔鏡下手術が普及してきています。

日本での現状

一般的には、肺がんが大きな場合や進行している場合には開胸下手術が行われることが多く、早期肺がんに対しては胸腔鏡下手術がおこなわれることが多いです。

胸腔鏡下手術は開胸手術の傷を小さくしてビデオモニターは補助としておもに直視下で行う胸腔鏡補助下手術とビデオモニターだけで行う完全胸腔鏡下手術に分けられます。手術機器の進歩・技術の向上もありビデオモニターで行う完全胸腔鏡下手術が普及してきていますが、まだ安定して行われる施設ばかりとは言えないのが現状と思われます。それがマスコミを賑わすような記事を見かける原因かもしれません。

ロボット手術は一般の方々の期待が大きいように感じますが、多大なコストがかかることもあり現在行われている施設はまだ少数で保険適応とはなっていません。今後コスト低下が進むことが待たれます。

胸腔鏡下肺がん手術のメリット・デメリット

完全胸腔鏡下手術はより低侵襲で体にやさしいと考えられていますが、一方でその手技の精度・出血に対する処置の遅れなどが指摘されてきました。現在では様々な方策がとられるようになり治療効果を損なうことなく、より低侵襲に行い得る手術として認められてきています。

おわりに

胸腔鏡下肺がん手術は決して簡単な手術ではありませんが、熟練したチームが行うことにより安全性も確保されそのメリットも得られます。先入観をもちすぎることなく治療法の1つの選択肢として考えられるのが良いと思います。

 

呼吸器外科部長 鷲尾 一浩