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放射線治療

放射線治療装置を更新しました

~高精度放射線治療装置Infinity導入後IMRT60件以上、
定位照射20件以上実施しました~

はじめに

当院で13年間稼動してきた放射線治療装置を2018年度更新いたしました。
Elekta社製の『Infinity』という装置で広島県初導入となります。
以前の放射線治療装置よりも高精度な位置あわせや照射方法が可能であり、治療装置と同時に更新した治療計画装置、品質管理機器を用いることで患者さまにより良い治療を提供できるようになりました。

Infinityの機能

Infinityは放射線の照射野形状をつくる上で欠かせないマルチリーフコリメータ(MLC)が1枚5mmのものが160枚あり、その1枚1枚に人工ルビーを取り付け赤外線カメラで監視することで24時間、0.1mm単位の位置制御を可能としています。複雑な形状を容易に作り出し、治療範囲を限定することができます。


  • 高精度な5mmマルチリーフコリメータ

  • 細やかな照射野形状を作成可能

また、治療装置自体にCTを撮影できる特殊な装置が設置されており、以前では見ることができなかった内部構造を確認することができるようになりました。その際の位置ずれ量を計算し、寝台が適切な位置に移動する作業をコンピューターが自動で2~3分以内に行います。
内部構造を確認できる一方で、Catalyst(カタリスト)という装置で体表面をカメラで監視し、モニタリングすることもできます。全国でもまだ数台しかない装置で、乳房や皮膚近傍の腫瘍の治療に役立てたり、治療中のモニタリング、呼吸波形の取得など幅広く活躍できます。


  • 高画質な画像を取得できるコーンビームCT装置

  • 体表面をモニタリングし位置あわせが可能

放射線治療について

放射線治療は、「切らずに治すがん治療」と言われ、手術・化学療法(抗がん剤治療)と並ぶがん治療の3本柱の1つです。体に放射線を当てるということで怖いイメージがありますが、照射中は痛みや熱さなどの自覚症状はなく、治療時間は症例によって異なりますが、通常で10~20分で終わります。

また、照射範囲以外で放射線の影響が出ることはなく、他のがん治療と比べて、治療期間中の副作用が軽い場合が多いため、外来での通院が可能であり、仕事をしながら治療を受けられる方もたくさんいらっしゃいます。

当院は放射線治療の機器・スタッフの充実に力を入れており、体幹部定位放射線治療(SBRT)の認定施設としても実績を重ねています。平成24年度からは新たに、骨髄移植などの造血幹細胞移植の患者さんに対する全身照射(TBI)を開始しました。

体幹部定位放射線治療について
(stereotactic body radiotherapy : SBRT)

体幹部定位放射線治療とは、病巣に対して高い精度で放射線を集中して当てる治療法です。当院では平成20年9月に広島県福山市で初の体幹部定位放射線治療の施設認定を受けることができました。

体幹部定位放射線治療について

がん病変をピンポイントで狙い撃ちできるため、通常の放射線治療よりも多めの線量を4~5日に分けて短期間で投与します。肺癌の治療成績に関しては、転移がないがんで大きさが3cm以下のものの局所制御率(放射線を当てた所からがんが再発しないまたは再燃しない割合)が約90%で、5年生存率は80~90%くらいといわれています。

つまり、早期の肺癌では比較的少ない身体的負担で、手術と同等の治療効果を得られる治療法といえます。また、治療中は痛みなどの苦痛は伴わず、全身的な負担も少ないため、ご高齢の方や合併症のある方で手術ができない場合でも治療が可能です。

しかし、心臓や大血管、食道、脊髄などの近くにがんがある場合は、大量の放射線照射で重篤な副作用を起こす可能性があるため治療できないこともあります。

全身照射について

放射線治療は主に局所治療(腫瘍のある部分のみを狙って放射線を当てる治療)ですが、白血病などの血液の病気は局所照射のみでは治療できない場合があります。

そのため、広く全身に放射線を当てる治療法として全身照射(以下TBI)が有効とされており、当院では平成24年10月に福山市で初のTBIを行いました。

TBIの目的は白血病などの造血幹細胞移植の前処置として抗がん剤との併用、もしくは単独で白血病細胞を根絶することです。また、移植後には移植細胞が自分の細胞を攻撃しようとする免疫機能によって移植片対宿主病(GVHD)が起きる可能性があります。この免疫抑制も重要な目的の一つです。

TBIは1回2Gyの線量を朝1回、夕方1回の計4Gyを照射します。

全身へ一度に放射線を照射する場合、生命に危険が及ぶ線量は4Gyとされていますが、朝と夕方で6時間以上の間隔をあけて照射することで正常組織が回復するので心配はありません。

治療時間は、副作用を防止する目的として通常の治療に比べてゆっくり照射するため、準備も含めて1回1時間ほどかかります。

治療実績

部位 平成30年 平成31年 令和2年
脳・脊髄腫瘍 1 0 0
頭頚部腫瘍 5 11 8
食道がん 3 1 1
肺・気管・縦隔腫瘍 50 49 36
乳腺腫瘍 17 13 14
肝・胆・膵腫瘍 7 1 9
胃・小腸・結腸・直腸腫瘍 3 2 1
婦人科腫瘍 2 0 1
泌尿器系腫瘍 9 9 16
造血・リンパ系腫瘍 53 32 32
皮膚・骨・軟部腫瘍 1 2 1
良性疾患(その他) 1 1 1
再診 28 30 50
総数 180 151 157

治療スタッフ

日本放射線腫瘍学会認定医 放射線科医 1名
放射線治療専門技師 3名
医学物理士 1名
品質管理士 1名
放射線治療専任看護師 2名

放射線治療に特化した資格を有する技師で構成されています。これは近隣の病院の中でも高いレベルです。我々は放射線治療以外にも、正しく放射線が出ているかなどの線量チェックや定期的な機器の管理を行っています。作業は日常の治療に支障がない時間帯から開始し、夜遅くまでかかることもしばしばありますが、その地道な取り組みが少しでも多くの患者さんのお役に立てるものと信じて、スタッフ一同頑張っています。

さいごに

放射線治療更新に伴い、高精度な放射線治療を安全に行えるようになりました。