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たかが貧血! されど貧血(恐るべし)!

  • 2016.3.28

<ピットフォール>

貧血と言われると、鉄剤を飲めば、貧血が改善すると思われている。そのため、命に関わる病気ではないだろうと思われがちである。巷では、造血と称して鉄を多く含む食品が販売されている。

<正しい理解>

鉄の摂取で改善する貧血は、一部の患者さんに限られる。代表的なものとしては、生理(月経)が多くなり、貧血に至った場合である。この場合、命に関わる危険は低く、鉄の摂取が一番の恩恵を受ける。過多月経以外の理由で鉄剤を飲むことになると、何か他の病気があると考えなくてはいけない。一方、鉄剤を内服するだけ
では貧血が改善しないケースが、実は多い。貧血と一言で言っても、命に関わる病気が潜んでいることがある。そこで、この度は貧血について正しい理解を深めていくことにする。

貧血を大きく以下の4つに分類(A~D)。そして、さらに細かく亜分類する。

A. 材料の不足

1) 鉄欠乏性貧血(鉄不足)
原因:過多月経、消化管出血(胃潰瘍、大腸ポリープ、大腸憩室、胃がん、大腸がん)
治療:貧血の原因となる病気の治療を行った上で、鉄剤の投与
2)巨赤芽球性貧血(ビタミンB12または葉酸不足)
原因:胃の全摘出、萎縮性胃炎、関節リウマチの治療薬メソトレキセートの副作用
治療:ビタミンB12ないし葉酸の投与
3)腎性貧血(エリスロポエチンの低下)
原因:慢性腎不全
治療:エリスロポエチンの注射

B. 破壊の亢進

1)自己免疫性溶血性貧血(温式、冷式)
原因:自己免疫の破綻(特発性、膠原病、悪性リンパ腫、薬剤性、ウイルス感染)
治療:ステロイドの投与
2)発作性夜間血色素尿症
原因:造血幹細胞の異常クローンの出現(特発性)
治療:造血幹細胞移植、抗体療法

C. 骨髄不全(骨髄の減少)

1)再生不良性貧血
原因:特発性、薬剤性
治療:強力な免疫抑制剤の投与
2)慢性炎症に伴う貧血
原因:慢性感染(結核、難治性感染)、膠原病、がん
治療:原疾患の治療、輸血

D. がんによる

1)がんの骨髄浸潤
原因:正常造血(骨髄)の減少
治療:原疾患の治療
2)造血器腫瘍(白血病、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫など)
原因:正常造血(骨髄)の減少
治療:原疾患の治療

以上から、貧血といっても、病気・病態は多肢に渡る。過多月経による鉄欠乏性貧血のみが、比較的安全な病気といえる。それ以外の貧血は、命に関わる原因が潜んでおり、貧血となる元の病気(原疾患)を治すことが最も大切である。そこで、健診等で貧血を指摘されたなら、たかが貧血と思わないで、怖い病気(されど貧血)が隠れている可能性があると考え、よく調べることが大切である。

血液内科部長 木口 亨